Works
作品一覧
『写真論』
ー荒川とその周辺にてー
(2025-)
本作品は1950年代後半から60年代前半にかけての反芸術運動やその代表的な作家である高松次郎(1936-1998)と、それ以降の現代美術や写真の動向を探り現代写真との接続を試みるものである。
反芸術という概念は美術作家のマルセル・デュシャンにより1914年に始まり、1960年代には現代美術における大きな潮流となった。高松は1954年に東京藝術大学油画科に入学して小磯良平に師事した。その時代、戦後復興と共に前衛美術運動は盛んになり、1957年にフランスの美術評論家のミシェル・タピエが来日して「熱い抽象」といわれるアンフォルメル旋風が巻き起こった。同時期、若手作家による前衛美術の実験場と化した読売アンデパンダン展に高松は1958年に初出品してその潮流に加わった。読売アンデパンダン展に出品された従来の美術概念を破壊するような作品に対して美術批評家の東野芳明は反芸術と命名したが、「常識化(概念化)あるいは固定化してしまっているようなことは白紙にもどしてしまわなければ何ごとも始めない。いや、何かを始めるその活動自体が何かを白紙にもどす手続きだったといえるかもしれない1。」と、高松は1982年に若かりし頃の自身の活動を振り返っている。高松、赤瀬川原平、中西夏之らによる前衛美術集団ハイレッド・センターを経たのち、高松は『影』『遠近法』『写真の写真』『複合体』などのシリーズで、平面、立体、写真、インスタレーションなどの様々な作品を制作した。その後、平面絵画の制作を再開し、線と円で構成された幾何学的な『平面上の空間』を経て、1980年から『形』を亡くなるまで描き続けた。
一方、近年の撮影や出力のデジタル技術の進化やAIによる画像生成などにより写真は大きな変革を迎えている。写真は表層のイメージやそのイメージが発する物語を享受するメディアという既存の考え方は変化し写真の概念が拡張しつつある。高松が唯一写真を使用した作品である『写真の写真』は、美術評論もしくは写真評論において語られる機会は多くないが重要な示唆を含んでいるのではないだろうか。このような視点は未来の写真の可能性を思考する上でも欠かせないだろう。
【引用文献】
1 高松次郎『不在への問い』水声社、2003年、p. 123。
『END』
-straight photographys-
(2018)
だいぶ昔の話になるが1992年の夏、私が学生の頃に水戸芸術館で写真家ロバート・メイプルソープの回顧展があり、はじめてメイプルソープの作品を目にした。メイプルソープがHIVで亡くなってから約3年後のことである。XXXと花、生と死、恐怖と美しさなどが表裏一体の写真作品は二十歳の私に強烈な印象を残した。
その後、メイプルソープの墓がニューヨークのクイーンズにあるということを知り、いつか訪れたいと思い続けて20年後にようやく実現することができた。さぞかし立派な墓だろうと想像していたが、広い墓地の奥にあったメイプルソープの墓は意外にシンプルなものだった。それでもいま自分が立っている地面の真下に棺に入ったメイプルソープの亡骸が横たわっている。あのメイプルソープが睡っているかと思うと、頭がクラクラするような何とも言えない複雑な感情がこみ上げてきた。それと同時にロバート・メイプルソープという写真家の人生の終点にたどり着いてしまった、もうこれ以上先はない切なさを感じた。そして、何枚か写真を撮影して静かにその場所を離れた。
数年後、ニューヨーク市とその周辺のデッドエンドを巡る旅をした。住宅街、倉庫街、海岸沿い、荒れ地など。どの場所も人気はなく大都市の辺境に来てしまったことを実感した。そして、これ以上先に道はないという、メイプルソープの墓を訪れたときと似た感情を抱きながら来た道を引き返した。
振り返るとこの旅の起源は、メイプルソープの墓を訪れたときであったと感じている。
➡️AERA DIGITALインタビュー
『Architecture』
Profile
プロフィール
1972年 埼玉県生まれ
1996年 大阪芸術大学 芸術学部写真学科中退
2024年 京都芸術大学大学院 芸術研究科超域制作学プログラム専攻 後藤繁雄名誉教授に師事
現代美術&写真
Contemporary Art & Photograph
新井隆弘
| 1995年 | ロングアイランド大学マスターフォトグラフィーワークショップに参加して、比嘉良治氏(Yoshi)に学ぶ |
|---|---|
| 2016年 | ニューヨーク・クイーンズにある写真家ロバート・メイプルソープの墓地を訪れる |
| 2019年 | 「END」京都国際写真祭ポートフォリオレビュー ファイナリスト |
| 2020年 | 「END」個展 エプサイトギャラリー(東京・丸の内) |
| 2021年 | 「END」第30回林忠彦賞選考で、推薦委員により推薦される |
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