Works
作品一覧
『写真』
-ポスト・フォトグラフィーの時代に「写真の白紙化」を再考する-
(2025-)
-写真における『空間概念、期待』-
昨年の春に自転車で走行した荒川の河川敷では、道の両端に黄色い菜の花が陽を浴びて輝くように咲き乱れていたが、その1ヶ月後に同じ場所を訪れたら何事もなかったかのように菜の花は消え去っていた。
印画紙は奥行きのない紙でしかないが、その表層に存在するイメージは人をしばし幻惑する。バライタ印画紙に同一イメージをハイライトからシャドーまで明るさを変えて5枚焼き付け、現像液を吹き付けるようにしてイメージを浮かび上がらせた。写真におけるナラティブやストーリーは紙の上のイリュージョンなのだろうか。印画紙5枚を重ねてナイフで切り裂いてみた。
-take写真とmake写真-
河川敷を自転車で走りながらカメラで風景を撮影し、その翌日、昨日見た風景を思い出してAIによる画像生成を試みた。数個の単語をキーボードで打ち込むと昨日見たものと類似した風景が多数生成された。数ヶ月後、撮影した写真とAIが作り出した画像を印画紙に焼いてみると虚実の区別が不確かになり、”自分はかつてその場所に居た”、”かつてその場所に居たかもしれない”、”その場所に居たのだろうか”というように、次第に自分の記憶が曖昧になっていった。事実を担保するという役割から解放された写真はどこに向かうのだろうか。
近年、AI画像生成をはじめとした技術の革新、及びそれに伴う人々の意識の変化により写真をめぐる環境が大きく変化し、写真は表層のイメージやそのイメージが発する物語を享受するメディアという既存の考え方を超えて写真の概念が拡張しつつある現在、このような制作は写真の可能性を思考する上で有効だろうか。
『END』
-straight photographyの行き止まり-
(2016-2018)
「何らかの「物語」に表現を回収するのではなく、バラバラに放置すること(なぜなら写真とは本質的に反物語的、反解釈的なものだからだ)1」
だいぶ昔の話になるが1992年の夏、水戸芸術館で写真家ロバート・メイプルソープの回顧展が開催され、はじめてメイプルソープの作品を目にした。メイプルソープがHIVで亡くなってから約3年後のことである。XXXと花、生と死、恐怖と美しさなどが表裏一体の写真作品は二十歳の私に強烈な印象を残した。
その後、メイプルソープの墓がニューヨークのクイーンズにあるということを知り、いつか訪れたいと思い続けて20年後にようやく実現することができた。さぞかし立派な墓だろうと想像していたが、広い墓地の奥にあったメイプルソープの墓は意外にシンプルなものだった。それでもいま自分が立っている地面の真下に棺に入ったメイプルソープの亡骸が横たわっている。あのメイプルソープが睡っているかと思うと、頭がクラクラするような何とも言えない複雑な感情がこみ上げてきた。それと同時にロバート・メイプルソープという写真家の人生の終点にたどり着いてしまった、もうこれ以上先はない切なさを感じた。そして、何枚か写真を撮影して静かにその場所を離れた。
数年後、ニューヨーク市とその周辺のデッドエンドを巡る旅をした。住宅街、倉庫街、海岸沿い、荒れ地など。どの場所も人気はなく大都市の辺境に来てしまったことを実感した。そして、これ以上先に道はないという、メイプルソープの墓を訪れたときと似た感情を抱きながら来た道を引き返した。
これらのデッドエンドの写真自体に意味はなく物語も存在しない。時間と空間の断片を集積して図鑑化した行為だと思っている。こうして行き止まりの景色を手にして長らく取り組んできたストレート・フォトを終わることにした。
【引用文献】
1 後藤繁雄『1990年のウェイスティッドランド』本本堂・太田出版、1994年、pp. 6-7。
➡️AERA DIGITALインタビュー
Profile
プロフィール
新井隆弘
反芸術/写真
Anti-Art, Spirit of NEO-DADA & Photograph
新井隆弘写真事務所(フリーランス・フォトグラファー)
埼玉県生まれ
大阪芸術大学 芸術学部写真学科中退
京都芸術大学大学院 芸術研究科超域制作学プログラム後藤ラボ修了 後藤繁雄名誉教授に師事
| 1995年 | ロングアイランド大学マスターフォトグラフィーワークショップに参加して、比嘉良治氏(Yoshi)に学ぶ |
|---|---|
| 2016年 | ニューヨーク・クイーンズにある写真家ロバート・メイプルソープの墓地を訪れる |
| 2019年 | 『END』京都国際写真祭ポートフォリオレビュー ファイナリスト |
| 2020年 | 『END』個展 エプサイトギャラリー(東京・丸の内) |
| 2021年 | 『END』第30回林忠彦賞選考で、推薦委員により推薦される |
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